Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Read 五瓣の椿 (ごべんのつばき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 149,721 characters · 296 screens
おしのは佐吉のようすを見た、「――丸梅へいってもらうつもりだったけれど、そんなに酔っててはしようがないわね」
「酔ってやあいません、酔っちゃあいねえが、今夜はあの件をとっくり相談することにしよう」と佐吉は云った、「丸梅は逃げやあしませんよ」
おしのは佐吉の顔を見ながら頷いた。
船に乗ってからも、佐吉は盃をはなさなかった。障子で囲った屋形船の中に、派手な色の蒲団を掛けた置き炬燵があり、燗鍋をのせた小さな火鉢と、酒肴の支度ができていた。佐吉は自分で燗をし、手酌で飲み、肴をつつきながら、おちつかないようすで、絶えまなしに饒舌っていた。
「当ります」
弥太の声がし、ふなばたが土堤をこすって停った。橋ではないらしい、乗るときに橋場へ着けろと云っておいたので、障子をあけてみると、船は土堤の下に着いていた。
「向島です」と佐吉が云った、「長命寺の下のところですよ、こっちのほうがいいと思いましてね」
そして彼は立ちあがり、艫のほうの障子をあけて、弥太になにか囁いた。
――打ち合わせてあったのだ。
あたしが来るまえに、飲みながら打ち合わせておいたのだ、とおしのは思った。