Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

Read 五瓣の椿 (ごべんのつばき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 149,721 characters · 296 screens

Aozora Bunko

「だめよ」おしのはあまく囁いた、「灯を消してちょうだい」

「恥ずかしい柄かよ」

「障子に影がうつるじゃあないの」おしのは背中で佐吉にあまえた、「土堤から見られたらどうするの、ねえ、灯を消して」

佐吉は手を放し、おしのが帯を解きかかるのを見て、行燈を吹き消した。

そのとき土堤の上を、二人伴れの男が歩いていて、「ようよう」と声をかけた。酔っているのだろう、互いに支えあいながら、大きな声で、「ようようやけます」とどなった。屋形船の灯が消えるところを見たらしい、絡みあってひょろひょろと泳ぎ、片方の男が、「みせつけるない、ちくしょう」と喚き、片方が、「石をぶっつけるぞ、野郎」とどなった。

「放してくれ」とその男はよくまわらない舌で云った、「石を捜して、ぶっつけてやるんだ」

「よしきた」伴れの男が云った、「おれも手伝ってやらあ、おらあ世の中のためになることなら、命も要らねえ、ほんとだぜ、世の中のためになることならなんだってやるんだから」

「いいことを云うぜ、おめえは」まえの男は相手の肩に凭れかかった、「男はその意気だ、じゃあひとつ、その意気で善公のところへ押しかけるか」