Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Read 五瓣の椿 (ごべんのつばき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 149,721 characters · 296 screens
に思えてしかたがないんです」
「女中が来るよ」と彼が囁いた。
女中がはいって来、炬燵蒲団の上へ平の膳を置いた。二人前の汁や鉢や皿の物が並べてあり、源次郎が「あとはいいよ」と云った。女中が去ると、彼は手まめに角樽の酒を片口へ移したり、それを徳利に入れて、燗鍋の中へ立てたりしながら、おしのの気を変えようとしてやっきになった。
「私こそおよねさんに怨みが云いたいよ」と彼は燗鍋の下の炭火をあらけながら、調子を変えて云った、「これだけ長いあいだ逢っていながら、いつもうまく躰を躱されておあずけばかりだ、このあいだの伊賀正のときだってそうだろう」
「あたしの罪じゃありませんわ」
「まさか置いてきぼりとは知らないから、いい気になって飲みながら待っていた、女中の手前だって恥ずかしい、すっかり汗をかいちまったよ」
「あれはあたしの罪じゃなくってよ」とおしのは云った、「出ていってみたらおつるさんていう人、小さな子を二人伴れてしょんぼり立ってるじゃないの、広い土間の隅のところで、片手で五つになる子を抱きよせ、背中の子を肩で揺りながら、頼りなげに立っているのを見たら、どうしてもそのままではおけなかったのよ」