Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Read 五瓣の椿 (ごべんのつばき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 149,721 characters · 296 screens
――中村座へいってみよう。
桝屋は中村座の芝居茶屋で、佐吉というのは、その店に属する出方だった。若手の役者が正月の芝居をぬけるというのは、ちょっと不自然に思えたが、駕籠に乗ってゆく先を云うと、中村座は間口をひろげる普請ちゅうで、春芝居のあくのは十日ごろらしい、ということであった。
「いいわ」とおしのは云った、「とにかく桝屋へいってちょうだい」
佐吉に訊けば詳しいことがわかる、とおとよが云った。佐吉は古くからいる男で、おしのもよく知っている。母がその役者といっしょだとすれば、桝屋で知らない筈はないし、帰って来たかどうかもわかるだろう、おしのはそう考えたのであった。
桝屋の前で駕籠をおりると、表を閉めた店の前に、佐吉が若い男と立ち話をしていた。おしのはこの一年半ばかり来なかったので、彼はちょっとわからなかったらしい。それから吃驚したように、頭へ手をやりながら反った。これはどうも、すっかりおみそれをしました、暫くおめにかからないうちに、すっかりおきれいになって、などと、とめどもなくあいそを並べだすので、おしのは「ちょっと」と遮り、こっちへ来てくれ、という手まねをしながら、脇のほうへ寄った。