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あおいはらふじんのたいつり
垢石釣游記
佐藤 垢石
Read 垢石釣游記 (あおいはらふじんのたいつり) by 佐藤 垢石 (さとうこうせき) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 46,298 characters · 100 screens
その十分の三の七百余頭が、この金華山沖の荒潮の中でとれるのだ。北は千島から南は台湾、西は朝鮮に至る幾つもの漁場のうち、金華山沖が一番数多くとれるのだ。
僕が捕鯨見物に金華山沖を狙ったのには合点がいくだろう。
鮎川港の空は、黒く曇って月が暗い。船は左舷に赤、右舷に青の燈火を輝かして港を出た。だが、海は濃い霧のために閉ざされて一寸先も見えないのだ。晴れていれば右に網地島、左に鹿がいる金華山島が見えるのだそうだが、ただ行く手は暗黒一色に塗りつぶされている。その中を第二京丸は、静かに用心深く進んで行く。
一寝入して船室から甲板へ出て見ると、船はもう七十マイルも太平洋の沖を走っている。時計を見ると朝の七時、陽が高い筈だが、この辺も濃霧で五、六町先が見えない程だ。
「これでは鯨群の発見は困難だ」と丹下船長は首を傾ける。晴れていればクロス・ネスト(檣の展望籠)から十二、三浬前方に泳いでいる鯨さえ見えるのだけれど、これでは四、五町先も覚束ないという。それでも船は鯨を探して沖へ向い、稲妻形に漕ぎまわるのだ。
船橋から、ふと左舷の方を見ると船に間近いところを、船と同じ方向に向ってイルカの大群が、素敵な速力で宙を切って泳いでいる。