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あおいはらふじんのたいつり
垢石釣游記
佐藤 垢石
Read 垢石釣游記 (あおいはらふじんのたいつり) by 佐藤 垢石 (さとうこうせき) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 46,298 characters · 100 screens
六
十五分ばかり走ったとき、ハーフスピードからチョイスローに、チョイスローからハーフスローに号令が変った。と、見ると海上に無数の鴎が飛翔している。鰮の大群が、海の上層にいるしるしだ。鰮を追って、跳躍している鰹の群が見える。
と――驚いた。その鰮と鰹の群の間に、五、六頭の大鯨が、むっくりと大きな背中を波の上へ現したではないか。
六
汽罐室へ、ベリースローの号令が伝わった。船長は、まっしぐらにガンウェーを走って砲台へ行って、引金を握った。そして、檣上の水夫長の掛声に従って、砲口を右に左に操縦する。船は、鰮と鴎の群を中心にして、海上に見い波を残して円を描き始めた。今度、鯨が姿を出せばドンと一発という船長の姿勢だ。
一頭の巨鯨が船首とイの字形になった角度の波間に突如として、むっちりとした大きな背中を浮せた。距離およそ三十間。僕の眼に、その巨鯨の背が映ったのと
ドン!
と、砲の響を聞いたのと同時だった。その瞬間――砲口を離れた大きな銛は、スルスルと響を立てて、直径一寸五分もある太い純絹のロープを引いたまま宙を弾丸のような速さで飛び、鯨の黒い肥った大きな背中をブス! と突き刺した。