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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
Read 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 349,705 characters · 678 screens
前面のおおたぶさが、
「ヒャア、お身は江戸下谷長者町道庵老でござるげな、身は金茶金十郎じゃ、はじめて御意のう得申す、以来お見知り置きくださるべえ」
「ははあ、わしは、いかにも長者町の道庵だが、何か御用ですか」
「問わでもお身に覚えがござろう、同輩、立たっしェイ」
金茶金十郎が後ろをさし招くと、紺看板が五つ六つ、
「ここで逢いしは百年目……」
「恨み重なる垢道庵」
「もうこうなった上からは」
「退引させぬ袋の鼠」
「道庵返辞は」
「何と」
「何と」
これらの紺看板が、すっかり道庵の行手に大手をひろげてしまいました。
ばかばかしくなってたまらないのは宇治山田の米友です。何が何だかわからないが、まるで出来損いのお茶番だ。
ははあ、宿許を出立の時、短気を起して手出しをするなと、道庵先生に誡められたのはこの辺だな――何かふざけて仕組んだ芝居に相違ない、少し離れて見ているに限る――車を少し遠のけて、油断なくながめていると、
その時、道庵は金十郎の前へ出て、
「わしは道庵に違えはねえが、何もお前さんたちに恨みをうける覚えはねえ」
「この場に及んで覚えなしとは白々しい、後学のため、積る怨みの数々を言って聞かそう。