Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Read 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,120 characters · 516 screens
「私も私で、いよいよ自分の心持がわからなくなってしまいました、ただ、ああして虐まれて若い女の人がなぶり殺しに遭っているのを、遠くに離れて聞きながら、私はそれを助けて上げようとしないで、何かの力ですくめられて、その音を聞いている間、私もかえっていい心持のようになって、しまいまでだまってそれを聞いていた自分の心持が、自分でわかりません」
「なんだか、私はぞくぞくと凄くなってきましたよ、弁信さん、お前さんのその面が凄くなってきました、どうしたらいいでしょうね」
「ああ、わたしもどうしていいか、わからない、今までわたしは、こんな心持になったことはありませんから」
「早く帰りましょうよ、早く本所へ帰ってしまいましょうよ」
この時に行手の方で、騒々しい人の足音と、声とが起りました。
「今、人殺しと言ったなあ、たしかにここいらだぜ、おいらの僻耳じゃねえんだ」
こう言って駈けて来る人は一人だが、その後ろに附添って、真黒い大きな犬が一頭。
「ムク、ここいらだぜ」
その声こそは紛うべくもなき、宇治山田の米友の声であります。
「人殺しと言ったのは、ここいらなんだ、だからおかしいと思ったんだ」