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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Read 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,120 characters · 516 screens
「拙者は水を浴びせられた、それでこの通り五体びっしょりになってしまった、衣裳を替えて待っているから直ぐに出て来さっしゃいよ、酒もあり肴もあり、月もそろそろ上るはずじゃ」
主膳はこう言い残して、またよろよろともとの座敷の方へ取って返します。
ほどなく土蔵から下りて来た机竜之助は、生平の帷子を着て、両刀を差して、竹の杖をついて、案内知ったらしいこの荒蔵を一人で歩いて行きました。
びっしょりになった浴衣を着換えた神尾主膳もまた、同じように生平の漆紋で、前の座敷に盃を手にしながら待っていました。
「暑いな」
竜之助が言うと、
「なかなか蒸す」
主膳は答えながら、竜之助の手を取って座敷へ延いて坐らせ、
「まず、一献」
ここで二人は水入らずの酒盛をはじめる。主膳の機嫌は全く直って、調子よく竜之助に酌をしてやりながら、
「何か面白いことをして遊びたいものだな」
と言いました。
「左様、面白いことをして遊びたい」
竜之助もまた同じようなことを言って相槌を打ちます。二人が面白いことというは、どちらもその内容が全く不分明でありました。内容が不分明ながらに、二人共に何か気が飢えて、酒のほかにしかるべき刺戟を求めているもののようであります。