Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Read 宮本武蔵 (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,809 characters · 369 screens
二
「…………」
「見るのも嫌」
「朱実、かんにんしてくれ」
「うるさいっ、うるさいっ、うるさいっ」
必死になって白い手が闇を打つのである。清十郎は苦しげに息を嚥んでその狂態を眺めていた。やや落ちついたと思うとまた、
「……きょうは幾日?」
「…………」
「お正月はまだ?」
「…………」
「元日の朝から七種の日まで、毎朝、五条の橋へ行っていると――武蔵様からの言伝があったのよ。待ち遠しいお正月……ああ早く京都へ帰りたい。五条の橋へゆけば、武蔵様が立っている」
「……え、武蔵?」
「……」
「武蔵とは、あの宮本武蔵のことか」
驚いて清十郎が顔を差し覗くと、朱実はもう答えもせぬ。青い瞼は昏々と眠っているのである。
ハラハラと枯れ松葉が波明りの障子を打つ。どこかで馬のいななきが聞えたと思うと、そこの障子に外から燈火が映し、旅舎の女を先に立てて、一人の客が案内されて来た。
「若先生は、こちらですか」
二
「おう誰だ? ――清十郎はこれにおるが」
あわてて境のふすまを閉め、何気ない態をつくっていると、
「植田良平でござる」
物々しい旅いでたちの男が、埃を浴びた姿のまま、障子を開けてその端へ腰かけた。