Japanese reading practice

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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

Read 宮本武蔵 (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,809 characters · 369 screens

Aozora Bunko

「……おい」

子を抱いて、もう寝床へ入っている女房へ、

「酒がなくなった」

「もう、おしまいでしょう」

「ほしい、もう今ほど」

「今夜にかぎって、どうしてそんなに」

「話が、だいぶおもしろくなって来たのだ」

「もうありません」

「岩公」

土間の隅へ向って呼ぶと、そこの板壁の向う側で、犬でも起きるようにガサカサ藁の音をさせ、

「親方、なんだえ」

と、潜って出られるほどな戸を押し開けて顔を出した。

「斧作んとこへ行って、酒一升借りて来う」

武蔵は、飯茶碗を持って、

「お先にいただきます」

すると、

「待ちねえ」

あわてて、梅軒は、箸を持っている彼の腕くびをつかんだ。

「せっかく、酒を取りにやったものを――」

「拙者のためなら、どうぞお止しください。これ以上は、飲めません」

「まあいいわさ」

と強いて、

「そうそう、鎖鎌について、おれに聞きたいといったが、おれの知る限りは、何なと話そう。それにしても、酒でも飲みながらでなくっちゃあ」

岩公はすぐ戻って来た。

壺から、銚子へ移して、炉の火にあたためながら、梅軒はもう自分の知識を傾けて、鎖鎌の戦に利のあることを力説していた。

――この鎖鎌を持って敵に当る場合、何より強味の多い点は、剣とちがって、敵に防禦の遑を与えないことである。