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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Read 宮本武蔵 (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,809 characters · 369 screens
愛すべきご愛嬌というもので、さすがの城太郎も頭脳がすこしどうかなっているにちがいない。落ちては生命がないように、必死になって、足をからんだり、しびれる手を持ちかえたり、自分の体をもてあましている。
そのうちに、ぽきッと生木が裂ける響きがしたので――彼は、しまったと思ったらしいが、難なく体は大地に坐っているので、城太郎はかえって、ぽかんとしてしまった。
「アふッ……」
馬はもう見えない。見えたって二度と乗る気もあるまい。
ややしばらく、そこで腰を抜かしていたが、抛り上げられたように、立ち上がって、
「――お通さアん?」
と、坂の上へ向って叫ぶ。
「お通さアん――」
道をもどって、急に駈け出した彼は、容易ならない大事へ駈けつけて行くかのような血相で、こんどは木剣をにぎりしめた。
「どうしたろう? お通さんは。――お通さあんっ、お通さあん!」
出会いがしらに柑子坂の上から降りてきた編笠の人があった。五倍子染の着物を着ており、羽織はまとわず、革袴に草履という身ごしらえ――もちろん大小は横たえている。
八
「これ、子供子供」
擦違いに、その五倍子染の小袖を着た男が手をあげ、小粒な城太郎を丁寧に足元から見上げて、