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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Read 宮本武蔵 (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,809 characters · 369 screens
それを、ぶーんと扉口から外へ投げやって、
「もういい」
と、朱実のそばへ坐ったが、彼女の二の腕は、決して、もういいどころの状態ではなかった。
真っ白な腕が、緋牡丹みたいに血しおを噴いている。――その白さと紅さに、小次郎はぶるると自分にまで、痛みと慄えを感じた。
「酒はないか、傷を洗う酒は。……いや、あるまいな、こんなところに、あるはずはない。ハテ、どうしたもの」
ぎゅっと、彼女の腕を抑えていると、熱い液体が、自分の手頸へも、さらさらとあふれて来るのだった。
「もしかして、犬の歯の毒でも受けたら、気狂いになってしまう。この間うちから、気狂いじみていた犬だ」
咄嗟の処置に迷いながら、小次郎がそう呟くと、朱実は、痛そうに眉をしかめ、白い頸を、うつつに反らしながら、
「えっ、気狂いに。……いっそのこともう、気狂いになりたい、気狂いに」
「ば、ばかな」
小次郎はいきなり顔をよせて、彼女の二の腕の血を口ですすった。口の中へ血がいっぱいになると吐きすてて、また、白い肌を頬張った。
八
たそがれになると、青木丹左は一日の托鉢からとぼとぼ帰って来た。
もう薄暗くなっている阿弥陀堂の扉を開けて、