Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Read 宮本武蔵 (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,809 characters · 369 screens
権叔父も、手をふりあげ、
「馬鹿ようっ、なんで逃げるぞい。――又八っ、又八っ」
それでもなお、又八が足を止めないので、お杉隠居は、皺首を前に伸ばし、
「泥棒、泥棒、泥棒っ――」
夢中でさけんだ。
暖簾棒だの竹竿を持って、町の者は、先へゆく又八を蝙蝠を打つようにたたき伏せた。
往来の者も、わいわいと取りかこんで、
「捕まえた」
「ふてえ奴だ」
「どやせ」
「たたっ殺してやれ」
足が出る、手が出る、唾を吐きかける。
後から息を喘って、権叔父とともに追いついて来たお杉隠居はそのていを見ると、群衆を突きとばし、小脇差のつかに手をかけて歯を剥いた。
「ええ、むごいことを、おぬしら何しやるのじゃ、この者へ」
弥次馬は、理を弁えずに、
「婆どの。こいつは、泥棒だよ」
「泥棒ではない、わしが子じゃわ」
「え、おまえの子か」
「おおさ、ようも足蹴にしやったな。町人の分際で、侍の子を足蹴にしやったな。婆が相手にしてくりょう、もいちど、今の無礼をしてみやい」
「冗戯じゃない。じゃあ先刻泥棒泥棒と呶鳴ったのは誰だ」
「呶鳴ったのは、この婆じゃが、おぬしら風情に足蹴にしてくれと頼みはせぬ。泥棒とよんだら伜めが、足を止めようかと思うていうた親心じゃわ。