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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Read 宮本武蔵 (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,809 characters · 369 screens
以後、京流吉岡の悪評をいいふらすと、ただはおかんぞ」
周りの船客がじろじろ見るので、藤次はそれだけの権威と立場とを明らかにして、
「このごろの若い奴は、生意気でいかん」
つぶやきながら、独り、艫のほうへ歩み去った。
――と、黙って美少年もその後について行くのだった。
(何かなくては済まないらしいぞ)
と予感したので、船客たちは、遠方からではあるが、皆、二人のほうへ首を振向けた。
藤次は決して事を好んだわけではない。大坂へ着けば、船着場にはお甲が待っているかもしれないのだ。女と会う前に、年下の者と、喧嘩などをやっては、人目につくし、あとがうるさい。
そしらぬ顔して、彼は、舷の欄へ肱をかけ、艫舵の下にうず巻いている青ぐろい瀬を見ていた。
「もし」
美少年は、その背中を軽くたたいた。相当に拗こい性質である。だが、感情に激しているような語気ではない、極めて静かなのだ。
「もし……藤次先生」
知らないふうも装えないので、
「なんだ」
顔を向けると、
「あなたは、人中において、私を法螺ふきと申されたが、それでは私も面目が立たないから、最前、やって見ろとおおせられた芸を、やむなくここで演じてみようと存じます。