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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Read 宮本武蔵 (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,809 characters · 369 screens
飼い主がねえならねえように、おらが処分するが、あとで苦情はあんめえな」
いないのではない、美少年は荷物に倚りかかって、黙然と、何か考え事でもしている様子なのだ。
「……なんて図々しい」
と、ささやく者がある。船頭もぎょろりと美少年の頭を見ていた。博戯を邪げられた金持ち階級は、遽にざわめいて悪口を口走る。――鉄面皮だの、唖かの、つんぼかのと。
だが美少年は、ちょっと膝を横に坐り直したきりだった。どこへ吹く風かという姿である。
「海のうえにも、猿が住むとみえて、飼い主のねえ猿が舞いこんだ。飼い主のねえ畜生なら、どうして始末してもかまうめい。――皆の衆、これほど船頭は断っているのに飼い主が名乗って出ねえだ。後で、耳が遠いの、聞かなかったのと、苦情のねえように、証人になってくらっせえ」
「いいとも、わしらが証人に立ってやる」
と例の旦那連中が、腹を立てて、呶鳴った。
船頭は、船底へゆく段梯子を下りて行った。上がって来た時には、火のついた火縄と、種子島銃を持っていた。
(――怒ったな船頭)
同時に、あの飼い主の若衆がどう出るだろうかと、人々はまた、美少年の姿を振りかえってみた。