Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens

Aozora Bunko

食物は尽きたが雪を噛って生きていたというような伝説を耳にすることが多いから、生還した者が無いというような場合には、原因は実際饑渇の為であっても、俗には不帰谷とか悪谷とか又は親不知子不知といった風の名で呼ぶのが、日本人には普通のようである。赤鬼、餓鬼、夜叉などは総て仏教から来た名前である上は、仏教信者が恐ろしげな山に此等の名を附けるのは敢て怪しむに足らない。饑渇なる漢語をこれと同一に律するのは余り面白くないように思われる。中村君の話に依ると、音沢村の猟師佐々木助七は、小黒部の北の谷の南即ち釜谷山の東直下に在る谷をケカツ谷だと教えたそうである。ケカツの由来に就ては南日君や吉沢君の説が曾て『山岳』誌上に発表された。私はそれらを熟読して唯だ自分の腑に落ちない所を茲に書き連ねた丈である。自説を立てる程の材料は持っていない。

暢んびりした気持になって櫓の周りに寝転びながら、皆して取止めもない浮世話に耽る。南日君は柱の一本に「八月二十日南日三人」と刻まれた文字を指して、先年の登山の確実なることを証明した。今日あたり若しや中村君が鐘釣温泉から登って来るかも知れないと思って、頻りに怒鳴ったり雪渓の上を探して見たりしたが、人の来るらしい気配もないので、五月笛吹川の東沢で釜に苦しめられたことや昨日の苦しかったことを取り交ぜて