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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
、「今年は釜の当り年だ」というようなことを書いた紙片を標石の上に載せて置いた。そして明日にも中村君が之を見たなら、「ナーンだ、馬鹿だなあ」と言いながら、ヨロヨロの櫓を吹き飛ばさんず勢で、例の呵々大笑するに相違ないと想って、南日君と二人で腹の皮を撚った。其後同君は天候の都合で登らなかったと聞いたから、櫓も未だに無事で残っているであろう。
日はぽかぽかとい、まるで春の野原にでも寝そべっているようだ。話をするのも懶くなって睡気がさして来る、長次郎などはとうに鼾をかいて寝て了った。小一時間遊んでいる中に黒部の谷から雲が湧き上って、日が影ると薄ら寒くなる。帰りがけに兎の子を二疋追い出して一疋を捕えた、皆して猫の子を撫でるように面白がって撫で廻す。可愛い大きな目をしてオドオドしている。元の穴へ入れようとしたが手を放れると直ぐ偃松の中へ潜り込んでしまった。南を見ると雲の中から高い尖峰が眼の前に顕れる、不思議と能く視れば何の事釜谷山であった。今度は雪田の上で金作が雷鳥の子を二羽つかまえた、足を縛って囮にして親鳥を捕るのだと旨い事を考え出したが、此雷鳥は親馬鹿でない唯一の例であったものか、遠くの方から見ているだけなので、折角の妙案も役に立たなかった。