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げんじゅつてんまたろう
幻術天魔太郎
野村 胡堂
Read 幻術天魔太郎 (げんじゅつてんまたろう) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,616 characters · 90 screens
侍大将の孫
天魔太郎のすがたも猫間犬丸のすがたも、どこへいったかかげも見せず、役人も群衆も、ただぼうぜんとして、キツネにつままれた心もちです。
侍大将の孫
どんな天眼通にも目のとどかないところがあり、いかなる幻術妖術も、術のおよばないところがあります。
道灌山の上に、こんなおとし穴があろうとは、天魔太郎も、猫間犬丸も気がつかなかったのでしょうか。いや術も腕も一だんとすぐれていた天魔太郎は、むかしむかしの山師坊主がここに壇をきずき、ぬけ穴をこさえて人をだましたことを知っており、それを利用しておたがいにきずつかぬうちに、猫間犬丸をさそいこんで、姿をかくしてしまったのです。
そんなこととはしらぬ猫間犬丸は、穴の底から立あがると、どこともなく、まっくらなところをあるいておりました。術くらべでは、あきらかに天魔太郎に負けたのですから、穴からはいでて、もとの竹矢来の中へもどるわけにもゆかず、ともかくゆけるところまでいって、ようすを見ようと決心したのです。
道は大地の下をどこまでもつづきました。しめっぼくカビくさくこのうえもなく不愉快ですが、しばらくゆくとむこうの方に、すこしばかりあかりがさします。