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げんじゅつてんまたろう
幻術天魔太郎
野村 胡堂
Read 幻術天魔太郎 (げんじゅつてんまたろう) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,616 characters · 90 screens
「つづくは大阪城の侍大将、塙団右ヱ門の孫、三郎丸、祖父三代のうらみ、おぼえたか!」
天魔太郎と塙三郎丸の二少年、めいめいの得物をふりかざして、左右両方から、家光めがけてサッとふりおろしました。
「まて、まて、またぬか」
家光とおもわれた人物パッとかつぎをぬぐと、それは麻のころもをまとった枯木のような老僧でした。
「なにを」
「えッ、ききわけのない」
むきなおった老僧、水晶のじゅずを空中にパッとふると、ふしぎや二少年の刀は宙にくぎづけされて、ひきも、かわしも、打ちこみもなりません。
「このうえはッ」
二少年は刀をなげすて二、三歩しりぞいて、幻妖の印をむすび、ありったけの呪文をとなえましたが、老僧はそれをうけて、ニッコリとわらって念仏をとなえると、幻術も妖術もなんのききめもなく、まるで石っころにむかって術をかけているようです。
「や、おのれは、どこの坊主だ」
天魔太郎は歯ぎしりしました。心外道人直伝の幻術を、まっこうからうけて打ちやぶれるものは、広い日本にいく人もいるはずはありません。
「駿河大納言さまのご嫡子ときけばなつかしいが、お気の毒なことに、邪法を修されて、天魔鬼神の同類となられ、この日本のしずけさをかきみだし、ふたたびむごたらしい戦国にひきもどそうとあそばすにおいては、天下万民のため、まことにゆるしがたい。