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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

Read 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像 (あしのうら) by 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,233 characters · 223 screens

Aozora Bunko

京子は、次第に露骨に、忌わしいそぶりを見せ、弦を離れた矢のように、源吉の胸から、飛び出して行った。

源吉は、絶望のドン底に、果てもなく墜落して行った。と同時に彼の執拗な復讐感は、何時の間にか、野火のように、限りなき憎悪の風に送られて、炎々と燃え拡がって行ったのだ。

そうした無気味な、静寂は、何気なく京子のところに訪れた、深沢の姿で、破られた。

源吉は、限りなき憎悪をいだきながらも、京子を思い切ることが出来なかった。泥沼のような憂鬱を感じつつも、松喜亭の重いドアーを押さぬ日はなかった。

その日も、薄暗いボックスのクッションに、京子と向い合っては見たが、間の小さい卓子一つが百尋もある溝のように思われ、京子は冷たい機械としか感じなかった。そして、その気不味い雰囲気に、拍車を加えるのは、京子のドアーが開くたびに、ちらりと送る素早い視線だった。

(矢張り、深沢という奴を待っているんだな)

源吉はむしゃくしゃした心に、アルコオルを、どんどんぶっかけた。

ギーッとドアーの開いた気配を感じたのは、京子が、(まァ……)と席をはずしたのと同時だった。

それっきり、京子は、彼の傍へ来なかった。