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あしのうら
怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
蘭 郁二郎
Read 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像 (あしのうら) by 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,233 characters · 223 screens
(深沢のやつが来たんか?)
源吉は、耳を澄ますと、陰のボックスから、男の笑い声にもつれて、京子の「くッくッくッ」という嬉しそうな笑い声が、故意とでないか、と思われるほど、誇張されて、響いて来た。彼は、クラクラする眩暈を振切って立上るとそのボックスを、グッと睨んでつき飛ばされるように、松喜亭を出た。
(京子奴!、畜生ッ)
そんなことを呻きながら、迂路つきまわっている中、源吉の頭の中には、何時の間にか、恐ろしい計画が、着々と組立られていた。
京子を轢殺してやろう、というのだ。
(岩ヶ根の魔のカーヴでやったら、又かと俺を疑うものはないだろう)
そればかりか、この計画には、或はその原因ともいうべき、大きな魅力があった。それは、老人を轢くより若いものの方が、柔かく轢心地がよかった、若い中でも、娘なんかは一層――と思うとあのムチムチと張切った、京子の豊満な四肢が、ドシンと車輪にぶつかって、べらべらな肉片になって仕舞う時の陶酔――。骨という骨は、あの楊枝を折るような……。源吉は、ぺろりと、乾いた唇を舐めた咽喉がゴクンと鳴ったのだ。
(恰度、今日は夜汽車の番だ)
源吉は、機嫌よく、出まかせな唄を歌いながら、松喜亭の方へ帰り始めた。