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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
Read 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,280 characters · 301 screens
ひどく用心深いじゃありませんか」
警部はそんな事を云いながら、拇指と人差指で、小函の蓋をソッとつまみ、静かにそれを持ち上げた。
「オヤ、血のようですね」
小函の中には、読者は既に御存知の血染めのハンカチが丸めて押し込んである。中村氏はそのハンカチを、実験台の上に取出して、恐る恐る開いて行った。開くに随って、何か不気味な細長いものが現われて来た。指だ。人間の指だ。鋭利な刃物で根元からプッツリ切断した、まだ生々しい血染めの指だ。
「女の指のようじゃありませんか」
警部は職掌柄、はしたなく驚くようなことはなかったが、その顔には流石に緊張の色を隠すことが出来なかった。
「僕もそう思うのですが、しかし女と極めてしまう訳にも行きますまい。華奢な男の指かもしれません」
「しかし、この指が川手氏の死を語っているというのは? これが川手氏の指だとでもおっしゃるのですか」
警部は血に染まった女のように細い指と、宗像博士の顔を見比べるようにして、不審らしく訊ねた。
「イヤイヤ、そうではありません。ここに拡大鏡がありますから、その指をもっとよく調べて下さい」
博士が差出す拡大鏡を受取ると、警部はポケットから鼻紙を取出して、それで指をつまみ上げ、拡大鏡の下に持って来て、熱心に覗き込んだ。