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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
Read 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,280 characters · 301 screens
費用はいくらかかっても、すっかりわたしが負担します。懸賞をつけてもよろしい。そうだ、犯人を発見し、娘を取返して下さった方には、五千円の賞金を懸けましょう。警察の方でも、民間の方でも構いません。娘を安全に取戻して下さればいいのです。わたしは一秒でも早く娘の無事な顔が見たいのです」
川手氏は感情の激しい性格と見えて、喋っているうちに段々興奮して、遂には半狂乱の体であった。
「なる程、懸賞とはよい思いつきですが、悪くすると手遅れかも知れませんね。……僕はさっきから、あの窓の下に落ちている封筒が気になって仕方がないのだが……」
宗像博士は一方の窓の下の床を、意味ありげに見つめながら、独言のように云った。
その声に、何かゾッとさせるような響がこもっていたので、あとの二人は驚いて、その方へ目をやった。如何にも一通の洋封筒が落ちている。
それを一目見ると、川手氏の顔色がサッと変った。
「オヤ、おかしいぞ。つい今し方まで、あんなものは落ちていなかったのですよ。それに、わたしの家には、あんな型の封筒はなかった筈だ」
云いながら、ツカツカと窓の側へ立って行って、その封筒を拾い上げ、気味悪そうに眺めていたが、いきなり呼鈴を押して女中を呼んだ。