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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
Read 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,280 characters · 301 screens
場所が化物屋敷の中だけに、そして、今の今まで、文字通りの闇の中を歩いて来ただけに、博士はついこの見世物の考案者を買被ったのであった。
少し落ちついて、よくよく見れば、博士の正面にあるものは、大きな鏡の壁に過ぎないことが分って来た。
「ナアンだ。鏡だったのか。しかし、それにしても、この見世物は普通の化物屋敷なんかと違って、なかなか味をやりおるわい」
だが、ナアンだ鏡かと、軽蔑するのは少し早まり過ぎた。この妙な小部屋には、まだまだ博士をびっくりさせるような仕掛けが、しつらえてあったのだから。
ヒョイと右を向くと、そこにも博士自身がいた。左を向くとそこにも同じ自分の姿があった。後を振返れば、ドアの裏側がやっぱり鏡で、そこに実物の五倍ほどもある大入道のような博士の、あっけに取られた顔が覗いていた。
イヤイヤ、こう書いたのでは本当でない。鏡は四方にあったばかりではないのだ。天井も一面の鏡であった。床も一面の鏡であった。そして、博士を取りまく壁は不規則な六角形になっていて、それが枠もなにもない鏡ばかりなのだ。つまり六角筒の内面が、少しの隙間もなくすっかり鏡で張りつめられ、その上下の隅々に電燈が取りつけてあるという、いとも不思議な魔法の部屋なのである。