Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Read 春いくたび (はるいくたび) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 70,094 characters · 142 screens
しばらくすると交代の兵といっしょに釜伏山の陣地へ行くことができるようになった。
しごとは弾つくりである。
いよいよ釜伏山の陣へ近よることはできたが、ここはさすがにきびしく、若菜は陣の外にいて弾をつくったり、兵たちの用事をしてやったりするだけで、なかなか砦のなかへはいることはできなかった。
しかし若菜はあせらなかった。
おとなしく、みんなのいうことをよくきいてせっせと働いた。
そしてそのあいだにいろいろなことを知った。兄がいま赤沢軍の本営にいるということ、釜伏山をせめとる手引をした手柄で槍組の百人頭になり、大将赤沢龍重の参謀格だということなど。
――では、うわさはほんとうなのだ。
きくにつれていまわしいうたがいがほんとうになってくる。
――ほんとうにお兄さまは裏切ったのか。
――いいえそんなことはないわ、お兄さまは武士よ、あってたしかめるまでは信じていなければいけないわ。
うたがいとまどいとがこもごも若菜の胸をくるしめた。
こうして更に十日ほどたったある日のこと、若菜はつくった弾を砦のなかへ運ぶようにと命じられた。――待ちに待った時期である、若菜は大勢の人夫や兵たちにまじって、火薬や弾を砦のなかへ運んでいった。