Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Read 春いくたび (はるいくたび) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 70,094 characters · 142 screens
三
「おわびはいかようにもつかまつる、果たし合いだけはひらにごかんべんねがいたい、ひらに――」
「ならん、貴公も武士なら刀のぬきようぐらいは存じておろう、さあこい!」
「そうおおせられずにまげてごかんべんください、かくのとおりおわびをつかまつる、ぜひおゆるしねがいたい」
伝九郎は廊下へすわって手をついた。五名の者はじろりと目くばせをしあったが、やがて、――孫作がせせら笑ってわめきたてた。
「そうまでいうなら、今日のところはかんべんしてつかわそう、だがそれではいかん、本心からわびるという証拠に、拙者の足をいただいてゆけ」
「――かようでござるか」
なにごとぞ、伝九郎は孫作のあげる足を手にとって、額へ三度までおしいただいた。
「わっはっはっは、あのざまを見ろ」
「犬のように足をなめおった、この腰ぬけをみんな見てやれ」
「いいざまだ、わっはっはっは」
さんざんにあざける五人、――伝九郎はうつむいたままじっと唇をかみしめていた。
三
わるい評判ほど早くひろがるものはない。
御槍奉行原田鉄兵衛の推挙で、一浪人からいきなり二百貫という高禄をたまわった伝九郎、どんな勇士かとねたみ半分で見張っていた人たちが、まっさきになって嘲笑を投げつけた、――だんまり伝九というあだ名が、いつか『逃げ足の伝九』