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ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう
本州横断 癇癪徒歩旅行
押川 春浪
Read 本州横断 癇癪徒歩旅行 (ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう) by 押川 春浪 (おしかわしゅんろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 22,749 characters · 45 screens
(六)髯将軍の一喝
彼等の顔は全く無気力と自暴自棄との色に曇っているのだ。そのくせ、欲はなかなか深い。一寸した物を買っても、すぐに暴利を貪ろうとする。実に懦弱で欲張り根性の突張った奴等ほど済度し難い者はないのだ。
(六)髯将軍の一喝
一寸した実例を示せば、我等が船負という村に差し掛かった時だ。一行は朝から重い天幕だの、写真器械だの、食糧品だの、雑嚢だのを引担ぎ、既に数里の道をテクテク歩き、流るる汗は滝のごとく、身体も多少疲れたので、このさき大子駅まで四、五里の間、二人ばかり荷物を担ぐ人夫を雇いたいものだ、と村中駆け回って談判に及んだが、誰も進んで行こうとする者はない。
「賃銭はいくらでも出す」と嗾かせば、
「それではいくら出す」とはや欲張る。
「一人前一円ずつ遣ろう」というと、
「一円ばかしでは――、この暑いに――」と仲間相顧みて、
「去年来た洋人さんは、五両ずつくれったっけなァ」などと吐かす。
「四、五里の道に五円もくれる馬鹿は日本人には無い。それでは一円五十銭ずつ遣ろう」といっても、彼等はいつまでも煮え切らずブツブツいっているので、髯将軍の癇癪玉が忽ち破裂して大喝一声、
「黙れッ! 馬鹿野郎、もう頼まない。