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ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう
本州横断 癇癪徒歩旅行
押川 春浪
Read 本州横断 癇癪徒歩旅行 (ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう) by 押川 春浪 (おしかわしゅんろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 22,749 characters · 45 screens
(一五)巨大な天狗面
イヤ腹の中へ飲んだのならまだいいが、奴さん一口でも多く飲んでやろうと周章てたため、水汲み隊が汗水流して汲んで来た大事な水をば、大半ゴボゴボと溢して地面に飲ませてしまったのだ。よくよく癪に触る奴等であるわい。
(一五)巨大な天狗面
しかし小言をいったとて帰らぬ事、一同は些か咽の渇きも止ったので、
「サァ明朝は早いぞ、もう寝ようか」と、狭い天幕内へゾロゾロと入り込んだが、下は薄い筵一枚で水がジメジメ透して来る。雨はますます激しく、開放しの入口は風と共に霧さえ吹込んで来るので、なかなか以て横になる事も出来ない。その内に焚火は天幕の一隅に燃え付いて、天幕は鬼火のように燃え上がる。
「ヤア、火事だ火事だ」と、周章てて揉み消す。火の粉は八方に散る。
「これは迚もいかん。寧ろ廃殿の中で眠った方が得策だ」と早速天幕を疊み、一同はまたもやゾロゾロと、簷は傾き、壁板は倒れ、床は朽ちて陥込んでいる廃殿に上り、化物の出そうな変な廊下を伝って奥殿へと進み、試みに重い扉を力任せに押してみると、鍵は掛っておらず、扉はギーと開いたので、これは有難いと、懐中電灯の光に中を照してみると、奥殿の床板は塵埃の山を為し、一方には古びた巨太鼓が横わり、正面には三尺四方程の真赤な恐ろしい天狗の面がハッタとこちらを睨んでござる。