Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Read 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 209,260 characters · 418 screens
墨のような夜である。
湊川の水音だけが枯れ草をそよがせてくる。小ぬか星が寒々と白い。そして、面を打つものは、風でもなく、寒さでもなかった、何ともいえない血のにおいである。
「……ううむう。ううむ」
うめいている者、うごかない者、かさこそと、血まみれのまま、這い出してゆこうとする者など――ずっと見まわしても二十人のうえはある。
「権三。おるか」
「へい」
「勘太、どうした」
「どうもしません」
「みんな来い」
介三郎は呼びあつめ、
「怪我人や、気を失っているものを、ひとまず小屋へみな運びこめ」
「へい」
「むしろや、ふとんや、何でもあつめて、寒くないようにしてやれ。――それから勘太、おまえが怪我をした時かかった医者を急いで呼んで来い」
「へい」
「それから為」
「へい」
「おまえは寺へ行って、ぼろきれや焼酎など、応急の手当てをする物やら、もっと寝具など、たくさん借りて来い。ひとりでは持ちきれまい三、四人つれて」
四
為も勘太ももどって来ないうちに、広厳寺の僧たちが、提灯をたずさえて、駈けつけて来た。
「たいへんな事になりましたものですなあ……」
凄愴な光景を見て、僧たちは歯の根をふるわせていた。