Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Read 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 209,260 characters · 418 screens
八
「ありそうなことだ」
吉保は冷静を欠かない。むしろこの際は検校を咎めず、検校を利用するのが賢明としているらしかった。
「吉保の身辺に危害を謀む刺客の影のさすことは、きょうまで一度や二度のことではなかった。吉保もいつか馴れて来たほどである。……だが、西山荘の隠居には、そも何の憎しみをふくんで、かくは吉保の生命をちぢめんと狙けまわされるのか。物好みというには余りに怖ろしい執念ではある」
と、ひとり慨然としていった。
検校の落度をここで咎めるよりは、検校の恐怖心をたくみに捉えて、自分の流布したいことを、この盲人の口から世間へいわせたほうが賢明である。そう吉保はすぐ考えていたらしかった。
紋太夫もすぐかれの意中を読んでいる。で共々、口をあわせて、検校に聞かせるためいった。
「さだめし、ご不快でしょうが、どうぞてまえに免じて、お忘れください。ご隠居の狂暴はきょうに始まったことでなく、西山へのご退隠も、すべてあなた様のさしがねのように、逆恨みを遊ばしておるにちがいございませぬ。――それをまたご意見もせず、かえって使嗾する側臣などもおりますために」
それからなお、過去にまでさかのぼって、光圀の在職中に、叛意のきざしがあったのを諫言したとか、また後嗣の当主も、病弱でほとほと困るとか、吉保へ詫びるがように見せかけて、実は検校