Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Read 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 209,260 characters · 418 screens
銀河
一
彼女のすがたが。愁然とゆくその影が。
「あっ。……おおお蕗どの」
思わず立って、声をあげようとした時である、うしろに番をしていた武士が、すぐ大きな手でかれの口をふさぎ、もうひとりの番の者へ、
「おい、手拭をかせ、手拭を」
と、締めつけながら、あわてていった。
銀河
一
初袷を着、風も秋めくと、毎日のように、江戸のどこかしらで、笛太鼓の音の聞えない日はない。わけて浅草界隈は、祭というと、裏店まで綺羅美やかに賑わう。
おもての魚松のおかみさんは、髪の生えぎわに汗をにじませていた。残暑の昼下がりである。やっと店の手がすこし空いたところらしい。前垂れの下に、何か持って、狭い路地を、小走りに曲って行く。
どぶ板が鳴る。どぶの下から蠅が立つ、それがみんな肥ったおかみさんの体にたかった。魚のにおいがするからであろう。
「人見さん。人見さん。――あらあら、寝てるんだね。大の字なりに」
格子も開けるには及ばなかった。狭い土間は開け放しだし、ふた間しかない家は、裏縁のすだれ一枚が揺れているだけで、風の吹き通しにまかせてある。
おかみさんは、上がって来た。
人見又四郎の浪宅である。