Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Read 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 209,260 characters · 418 screens
ただ発顕することを知らないか、忘れているか、紛らされているか、歪屈されているか、それだけの相違でしかない。
その証拠には、このとき突然、もう黙っていられないように、ぬっくと立ちあがるなり、
「おうっ、みんな、よくそういう気になっておくんなすった。決して、ひと事じゃあねえ。おれが生き証拠だ」
と、どなった者がある。
たれかと見ると勘太である。勘太はみなまでいいきれないうち、おいおいと泣き出していた。
一同はあっけにとられて、かれの狂態を見まもった。かれを知りぬいているはずの介三郎さえ、唖然としていた。
「聞いてくれ、みんな」
勘太は、わめくようにいう。
「なにをかくそう、おれの前身は、お菰の親方だ。喧嘩、ゆすり、酒、ばくち、ややもすれば、人を傷つけるし、悪ということなら、何でもやらないことはなかった。若い体をもちながら、三日すればやめられねえという諺どおり自堕落にまかせて、世の中に怖いもの知らずで歩いていたものだ。
――ところがついこの春、水戸のご城下で、初めて怖い世間にぶつかった。多寡が菓子屋のおやじだが、骨身に沁むような恥をおれに掻かせてくれた。いつものおれなら、すぐ叩ッ斬ってしまうところだが、そばにじッと見つめていたご老人がある。