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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Read 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 209,260 characters · 418 screens
精神のひとでなく、物のひとだった。いやそういうよりも、幕府至上のうえに立った無双の才識ある現実主義者だった。
かれには自己の家運とか子孫とかは案じられても、国家の永遠にたいしては二義的な考えしか持たなかった。
当然、光圀とは、生命観も、国体観もちがう。
さりげない座談のうちにも、ふたりは相合わぬものを、どうしようもなかったに違いない。
しかも、このふたりも、君側にあった、綱吉の補佐だった。
綱吉は、光圀を避けたのであった。吉保に傾倒したのである。――この大きなわかれ目から吉保のほうへ傾いた綱吉には、元来からそれだけ脆弱な素質があったことは否めない。――もし逆境の世にのぞんでいたら、もし輔佐の臣が良かったら――あるいはある程度までのひとには成れても、到底、偉なる主君ではあり得なかった。
吉保は、事々に、光圀を讒したろう。
親藩の、しかも副将軍たるひとを、讒するなど、むずかしいとも思えるが、直接、声をひそめるには及ばないのである。
桂昌院も、光圀はきらいであったし、大奥の女性群はほとんど、光圀の国策はよろこばなかった。吉保の幕政を支持した。ここの声は、将軍家をうごかし、副将軍をのぞき、政治をゆがめることなど、易々たるものであった。