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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Read 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 209,260 characters · 418 screens
……何かわたくしに」
「林助のことだが、実は、この日頃、案じているせいか、夢見が悪い。それにぷつりと便りも断えている。それについて、お次さんは何か聞いていないだろうか」
「…………」
お次は、俯向いたまま、畳の目を見つめていた。その微かな顫えを、又四郎はじっと見まもりながら問いつめた。
「――何か、小耳に挟むとか、こんな事があったとか、お次さんが、検校のやしきから出されるまでに、変った事はなかったろうか? ……訊きたいというのはそこだ。思い出してくれ。何か、あったろう。第一お次さんが、長年、何の落度もなく奉公しておりながら、理由もいわずに、暇を出されたというのがいぶかしかろう」
「…………」
「宿元へさがっても、決して、ひとにはいうなと、何か検校から口止めされた事でもないか」
「……又四郎さま」
お次は、急にうしろを見まわした。そして物に怯えるように、
「そう仰っしゃるのは、あなたにも何か、思い当りがおありなんでしょう」
「ないこともない。そなたが打明けてくれるなら、わしも秘し立てはせぬ」
「申します。いいえ、一度はお話してしまわなければ、身が疼いてなりませぬが、今日までこうしてお会いする折もなかったので」