Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Read 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 209,260 characters · 418 screens
故人卜幽軒の学風や趣味によるものであろう。
「すぐお弁当をめしあがられますか」
いま来たばかりというのに、もう性急に、又四郎は訊く。
老公はひたと坐って、
「まだ早かろう。中食には」
「もう午刻で」
「さようか。さてさて達者なようでも、やはり年よりの足かの」
「粗末な湯漬を支度しておきましたが」
「馳走になろう。……が、むだなものは並べるなよ」
「はい」
退りかけると、
「いそぐには及ばぬ。まず茶をいただこうで、しばらくそれにおれ」
「はい」
「又四郎も当年、もう三十に近いはずじゃの」
「悦之進どのと同年です。恥ずかしい至りです」
「なにが恥ずかしい。そちたちの世ではないか」
「にもかかわらず、かくの如くに、亡父の遺物の書斎に、なすこともなくくすぶっておるので」
「潜心、自分を培って、他日を期しているならよい」
「だめです。鈍才だから」
「鈍才も尊い。黙って、地下百尺にうずもれたまま、事成る日まで圭角を見せぬものは、名利の中に仰がれる才物より、どれほど、たのもしいか分らない」
「そんなのではございません」
又四郎は、無愛想にいう。
亡父の卜幽軒に似て体つきも貌かたちも恰好のよくない青年だ。