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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

Read 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 209,260 characters · 418 screens

Aozora Bunko

「おるぞ、おるぞ」

と、ささやいた。

ふと縁をふり向くと、縁のそとに、背なかを屈めて、老公のわらじや杖など、黙々と、沓ぬぎ石にそろえている者がある。

「……いましたか」

悦之進は、口を抑えながら、くすりと失笑する。

棒は、こっちを見もしない。沓ぬぎと並んで、背なかを向けたまま、老公の起つのを、むッつりと待っていた。

「どれ、参ろうか」

縁へ出てもなお、又四郎は無言のままで、老公がわらじの緒を自分でむすぶのを眺めている。

従者三名、四人づれとなった。きのうより暖かい。梅一輪一輪ずつの――句が思いあたる。

久昌寺できのうあずけた馬を曳き出し、その背をかりて、日もまだ暮れぬうち、太田の里までついた。

「ほう、月並祭りか」

老公の馬はすすまなくなった。村道は人混みで喧騒している。手綱をためていると、かえって、馬が人に怯じて飴屋の傘が、老公のからだに傾くほど、道ばたに押しやられた。

「又四郎、又四郎」

老公は、鞍のそばへ、かれを招いて、何かささやいた。

棒は、ひとを掻分けて、老公の馬のまえに立った。

そして突然、彼方の里神楽も黙ってしまいそうな大声をあげて、

「よけろ、よけろっ。