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がくせいものがたり
楽聖物語
野村 あらえびす
Read 楽聖物語 (がくせいものがたり) by 野村 あらえびす (のむらあらえびす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 193,667 characters · 381 screens
純情の奇才ベルリオーズ
小児の心
「野薔薇」「アヴェ・マリア」「聴け雲雀」といった可愛らしいものが良い。
ロッテ・レーマンはコロムビアに入っている「魔王」や「死と乙女」が聴かれる。ビクターのギンスターにも幾枚かあり、シュナーベル夫人にもあるが、それは省略する。
アルト歌手では黒人と混血児で近頃有名になったビクターのアンダーソンがある。私はあまり好まないが「死と乙女」などが代表作だろう。ビクターのオネーギンは老巧無比で、「君こそ我が憩い」が非常にうまい。シューマン‐ハインクの「魔王」もここに掲げてよかろう。あとはさしたるリード歌手はないように思う。
純情の奇才ベルリオーズ
小児の心
世にも不思議な音楽家はエクトル・ベルリオーズである。
作曲家としての彼の業績は、山の頂上から頂上への超人的大飛躍であり、芸術家としての気宇は、英雄的でさえあったにかかわらず、人間ベルリオーズは、小児の如く純情で、乙女の如く感傷的で、彼自身の制御さえ覚束なく、心の弱さをことごとに暴露して憚らなかったのである。
六十五歳まで山登りを止さなかったベルリオーズ、激情に駆られると、雨中の散歩も、雪中の睡眠さえも平気でやった、鉄の如き肉体を持ったベルリオーズが、十二歳のとき自分より六つ年上の少女――大きな眼をして薔薇色の靴をはいた――エステルに寄せた憧憬を、五十年後の六十一歳