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えどまえのつり

江戸前の釣り

三遊亭 金馬

Read 江戸前の釣り (えどまえのつり) by 三遊亭 金馬 (さんゆうていきんば) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 106,910 characters · 214 screens

Aozora Bunko

ひととき、「入れ食いの手水鉢」のように釣れる。多いときには、一度に五、六尾針にかかってくる。ボックスの戸をあけてみると、一間先も見えないくらいに吹雪いている。

土地の女が、氷の上へ売りにくるドブロクを飲んで、いい気持ちに寝てしまったことがある。夕方、宿屋の若い衆がたずねてきて、

「この人はものすごい人だ。氷の上で酒を飲んで寝たら、凍死してしまうよ」

と、驚かされた。七段目の由良之助ではないが、

「足もとも、しどろもどろの浮き拍子、テレツクテレツク、スッテンテン」

と、案内人の肩につかまって、行った日は早めにきりあげて宿につく。

「こんでいるので相宿にしてください」

相宿もいいが、ひげのはえた官員さんとはどうも苦手だ。ひとまわり部屋をのぞいて歩くと気の合う釣友が必ず二、三人はいる。見ず知らずの人でも、釣り人は変なスピッツみたいにほえるやつは少ない。少し飲んでいるうちに、十年もなじんだチンコロみたいに、遠慮なく話し出す。

あくる朝は、一番乗りと暗いうちから手あぶりをさげて氷の上へ行く。宿屋の若い者が氷の上に箱火鉢ぐらいの穴をあけておいてくれる。また、ほかの人が掘った後家穴も案外釣れることがある。