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ほうそうやわ
法窓夜話
穂積 陳重
Read 法窓夜話 (ほうそうやわ) by 穂積 陳重 (ほづみのぶしげ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,325 characters · 264 screens
しかしながら、近世心理学の進歩はこの説の根拠を覆えし得たのみならず、歴史上の事実に徴してもこの説の大なる誤謬であることを証拠立てることが出来ようかと思われる。
原始社会の法律を見るに、禽獣草木に対して訴を起し、またはこれを刑罰に処した例がなかなか多い。有名なる英のアルフレッド大王は、人が樹から墜ちて死んだ時には、その樹を斬罪に処するという法律を設け、ユダヤ人は、人を衝き殺した牛を石殺の刑に行った。ソロンの法に、人を噬んだ犬を晒者にする刑罰があるかと思えば、ローマの十二表法には、四足獣が傷害をなしたときは、その所有者は賠償をなすかまたは行害獣を被害者に引渡して、その存分に任すべしという規定があり(Noxa deditio)、またガーイウス、ウルピアーヌスらの言うところに拠れば、この行害物引渡の主義は、幼児または奴隷が他人に損害を与えたとき、または他人が無生物から損害を受けたときにも行われ、その損害の責任はその物または幼児らに在って、もしその所有者が為害物体を保有せんとならば、その請戻しの代価として償金を払うべきものであったとの事である。
啻に原始時代においてのみならず、中世の欧洲においても、動物に対する訴訟手続などが、諸国の法律書中に掲げられてあること、決して稀ではない。