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ほうそうやわ
法窓夜話
穂積 陳重
Read 法窓夜話 (ほうそうやわ) by 穂積 陳重 (ほづみのぶしげ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,325 characters · 264 screens
ところが被告は頭を白洲の砂に埋め、誠に恐入ったる義ながら、永の病気に身代必至と不如意に相成り、如何様にも即座の支払は致し難き旨を様々に陳謝した。
大隅守は更に押返して、「その方、大切なる病の治療を頼みながら、全治の今日となって薬料支払を渋るとは不届千万、一身を売ってなりとも金子を調達せよ」と言うに、「仰せは畏って御座りますれど、何分にも悪病の事とて、雇われようにも雇い手これなく、誠に致方なき次第」と如何にも困り入った様子である。
大隅守もいささか憐れを催して、更に医者に向い、「今聞く如き次第なるぞ。その方この者の請人に立ちて、いず方へなりとも住み込ませ、その賃銀を謝礼に取りては如何に」と穏かに申渡したが、医者はなかなか承服しない。「このような穢らわしき病人を雇う者が、いずくに御座りましょうや。唯々約定金差入の御申渡を」と、強弁の言葉未だ終らぬに、大隅守はきっと威儀を正し、「さてさてその方は矛盾の譫言を申す奴かな。病の故に人が厭わば、その病を癒したる医者が証人に立つのは当然の事ではないか。汝これを拒むからには、この者の病は未だ癒えざるは必定。癒えずと知りつつ癒えたりと申し立てて、礼金を騙らんとするは、仁術を事とする輩にあるまじき事なり、重ねて訴え出で苦情申し立つるにおいては、そのままには差置き難い。