Japanese reading practice

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うずまけるからすのむれ

渦巻ける烏の群

黒島 伝治

Read 渦巻ける烏の群 (うずまけるからすのむれ) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,240 characters · 35 screens

Aozora Bunko

牛や馬の群が、背に夕日をあびて、草原をのろのろ歩いていた。十月半ばのことだ。

坂本は、

「腹がへったなあ。」と云ってあくびをした。

「内地に居りゃ、今頃、野良から鍬をかついで帰りよる時分だぜ。」

「あ、そうだ。もう芋を掘る時分かな。」

「うむ。」

「ああ、芋が食いたいなあ!」

そして坂本はまたあくびをした。そのあくびが終るか終らないうちに、彼は、ぱたりと丸太を倒すように芝生の上に倒れてしまった。

吉永は、とび上った。

も一発、弾丸が、彼の頭をかすめて、ヒウと唸り去った。

「おい、坂本! おい!」

彼は呼んでみた。

軍服が、どす黒い血に染った。

坂本はただ、「うう」と唸るばかりだった。

内地を出発して、ウラジオストックへ着き、上陸した。その時から、既に危険は皆の身に迫っていたのであった。

機関車は薪を焚いていた。

彼等は四百里ほど奥へ乗りこんで行った。時々列車からおりて、鉄砲で打ち合いをやった。そして、また列車にかえって、飯を焚いた。薪が燻った。冬だった。機関車は薪がつきて、しょっちゅう動かなくなった。彼は二カ月間顔を洗わなかった。向うへ着いた時には、まるで黒ン坊だった。