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うずまけるからすのむれ
渦巻ける烏の群
黒島 伝治
Read 渦巻ける烏の群 (うずまけるからすのむれ) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,240 characters · 35 screens
九
「あんまり追いたてるから、なお分らなくなっちまったんだ。」
スメターニンは、毛皮の帽子をぬいで額の汗を拭いた。
九
薄く、そして白い夕暮が、曠野全体を蔽い迫ってきた。
どちらへ行けばいいのか!
疲れて、雪の中に倒れ、そのまま凍死してしまう者があるのを松木はたびたび聞いていた。
疲労と空腹は、寒さに対する抵抗力を奪い去ってしまうものだ。
一個中隊すべての者が雪の中で凍死する、そんなことがあるものだろうか? あってもいいものだろうか?
少佐の性慾の××になったのだ。兵卒達はそういうことすら知らなかった。
何故、シベリアへ来なければならなかったか。それは、だれによこされたのか? そういうことは、勿論、雲の上にかくれて彼等、には分らなかった。
われわれは、シベリアへ来たくなかったのだ。むりやりに来させられたのだ。――それすら、彼等は、今、殆んど忘れかけていた。
彼等の思っていることは、死にたくない。どうにかして雪の中から逃がれて、生きていたい。ただそればかりであった。
雪の中へ来なければならなくせしめたものは、松木と武石とだ。
そして、道を踏み迷わせたのも松木と武石とだ。