Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
うずまけるからすのむれ
渦巻ける烏の群
黒島 伝治
Read 渦巻ける烏の群 (うずまけるからすのむれ) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,240 characters · 35 screens
六
……半分わけてやろう。」
吉永は、自分が少くとも、明後日は、イイシへ行かなければならないことを思った。雪の谷や、山を通らなければならない。そこにはパルチザンがいる。また撃ち合いだ。生命がどうなるか。誰れが知るもんか! 誰れが知るもんか!
六
松木は、酒保から、餡パン、砂糖、パインアップル、煙草などを買って来た。
晩におそくなって、彼は、それを新聞紙に包んで丘を登った。石のように固く凍てついている雪は、靴にかちかち鳴った。空気は鼻を切りそうだ。彼は丘を登りきると、今度は向うへ下った。丘の下のあの窓には、灯がともっていた。人かげが、硝子戸の中で、ちらちら動いていた。
彼は歩きながら云ってみた。
「ガーリヤ。」
「ガーリヤ。」
「ガーリヤ。」
「あんたは、なんて生々しているんだろう。」
さて、それを、ロシア語ではどう云ったらいいかな。
丘の下でどっか人声がするようだった。三十すぎの婦人の声だ。それに一人は日本人らしい。何を云っているのかな。彼はちょいと立止まった。なんでも声が、ガーリヤの母親に似ているような気がした。が、声は、もうぷっつり聞えなかった。すると、まもなくすぐそこの、今まで開いていた窓に青いカーテンがさっと引っぱられた。