Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
うずまけるからすのむれ
渦巻ける烏の群
黒島 伝治
Read 渦巻ける烏の群 (うずまけるからすのむれ) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,240 characters · 35 screens
八
営門で捧げ銃をした歩哨は何か怒声をあびせかけられた。
衛兵司令は、大隊長が鞭で殴りに来やしないか、そのひどい見幕を見て、こんなことを心配した位いだった。
「副官!」
彼は、部屋に這入るといきなり怒鳴った。
「副官!」
副官が這入って来ると、彼は、刀もはずさず、椅子に腰を落して、荒い鼻息をしながら、
「速刻不時点呼。すぐだ、すぐやってくれ!」
「はい。」
「それから、炊事場へ露西亜人をよせつけることはならん。残飯は一粒と雖も、やることは絶対にならん。厳禁してくれ。」
「はい。」
「よし、それだけだ。」
副官が、命令を達するために、次の部屋へ引き下ると、彼はまた叫んだ。
「副官!」
「はい。」
「この点呼に、もしもおくれる者があったら、その中隊を、第一中隊の代りに、イイシ守備に行かせること、そうしてくれ、罰としてここには置かない。そうするんだ。――すぐだ、速刻やってくれ!」
八
一隊の兵士が雪の中を黙々として歩いて行った。疲れて元気がなかった。雪に落ちこむ大きな防寒靴が、如何にも重く、邪魔物のように感じられた。
雪は、時々、彼等の脛にまで達した。すべての者が憂欝と不安に襲われていた。