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うずまけるからすのむれ
渦巻ける烏の群
黒島 伝治
Read 渦巻ける烏の群 (うずまけるからすのむれ) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,240 characters · 35 screens
彼等の畑は荒され、家畜は掠奪された。彼等は安心して仕事をすることが出来なかった。彼等は生活に窮するより外、道がなかった。
板壁の釘が腐って落ちかけた木造の家に彼等は住んでいた。屋根は低かった。家の周囲には、藁やごみを散らかしてあった。
処々に、うず高く積上げられた乾草があった。
荷車は、軒場に乗りつけたまま放ってあった。
室内には、古いテーブルや、サモ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ールがあった。刺繍を施したカーテンがつるしてあった。でも、そこからは、動物の棲家のように、異様な毛皮と、獣油の臭いが発散して来た。
それが、日本の兵卒達に、如何にも、毛唐の臭いだと思わせた。
子供達は、そこから、琺瑯引きの洗面器を抱えて毎日やって来た。ある時は、老人や婆さんがやって来た。ある時は娘がやって来た。
吉永は、一中隊から来ていた。松木と武石とは二中隊の兵卒だった。
三人は、パン屑のまじった白砂糖を捨てずに皿に取っておくようになった。食い残したパンに味噌汁をかけないようにした。そして、露西亜人が来ると、それを皆に分けてやった。
「お前ンとこへ遊びに行ってもいいかい?」