Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Read 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 162,213 characters · 325 screens

Aozora Bunko

「ざまをみやがれ」

「いくら逃げ足の迅いてめえ達でも、水のうえじゃ、どうしようもあるめえ」

三人いちどに、身を躍らして、玉枝の舟へ、とび込んで来た。

「何をしやがる」

新七は、匕首を走らせて、ひとりの船頭へ突いてかかった。

匕首は、飛魚のように、空を泳いだ。

ひとりが、そのうしろを拯って、彼の喉を締めると、ひとりがすぐに、足をつかむ。

「ちッ、くそうッ」

盲目的な閃光が、やたらに、前の空を斬った。ぎりぎりと、歯ぎしりを鳴らして、足と喉の束縛を、ふり解こうとしてくのだった。

「親方、面倒だ」

「殺っちまおうか」

ふたりが言うと、見すましていた町人は、脇差を抜いて、新七の脾腹へ刺しとおした。なんの苦もなく、鋭利な刀の尖が、七、八寸ほど、人間の胴へはいった。

「ううッ……。うーむッ……」

真っ赤な、血あぶらの漲った海のうえに、小舟は、大きく揺れ返った。

――玉枝は、その揺れうごく舳から、身を躍らしかけていたが、咄嗟に、それを見つけた町人の腕にひき戻されて、仰向けに、転がった。

「この女狐め!」

町人は、足蹴にかけて、

「だいじな汝を逃がしてたまるものか」

と、自分の舟へ、ひき込んで、捻じ伏せた。