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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
Read 猟奇の果 (りょうきのはて) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 134,971 characters · 270 screens
足ははだしだし、髪の毛は、さんばらにして、幽霊みたいに顔の前に垂れ下っていた。
普通の娘なら、そんな闖入者を見たら、奥へ逃げ込むか、人を呼ぶかする筈だが、美禰子さんは普通の娘ではなかった。無論最初は恐れを為して、窓をしめようとさえしたけれど、その次の瞬間には、持前の異常な慈悲心が、ムクムクと頭をもたげて来た。
美禰子さんは、乞食娘が近づいて来るのをじっと待構えていた。こんな際に使用する最も慈悲深い言葉を頭の中で探しながら。
乞食は、やがて、窓の下にたどりついて、そこに突立ったまま、ジロジロと令嬢を眺め、見かけによらぬ美しい声で云った。
「お嬢さま、なぜお逃げなさらないのです。怖くはないのですか」
アアこの娘は境遇の為にひがんでいるのだ。それであんな皮肉な云い方をするのだ。と令嬢は心の中で考えた。そこで、出来る丈けやさしい声で、先ず、
「お前、どこから這入っておいでなの」
と尋ねて見た。
「門から……、だって、寝る所がなければどんなとこだって構ってはいられませんわ。あたし、昨夜は、お庭の隅の物置小屋で寝たんです」
案外上品な言葉を使っている。この娘は生れつきの乞食ではないらしいぞ。