Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

Read 猟奇の果 (りょうきのはて) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 134,971 characters · 270 screens

Aozora Bunko

だが何も云わない。

「この手紙だね」

「…………」

「オイ、どうしたというのだ。アア、君は、筆蹟を見ているのかい」

「似ている。僕は悲しいことに、この恋という字の風変りなくずし方を覚えていたのだよ」

「君の細君のかい。……だが君、女の筆蹟なんて、大抵似た様なものじゃないか。……女学校の御手本通りなんだからね」

「そうだ。今度に限ってあいつが東京へ一緒に行くと云い出した訳が分った。あいつはこちらで、君と……イヤもう一人の男と、存分逢う積りなんだ、その下心だったのだ」

そして、それ以上には、お互に云うべき言葉を見出し兼ねた。夜更けの八畳の座敷で、二人はぽつねんと向い合っていた。

「僕はもう帰る」

愛之助が非常に不愛想に云って立ち上った。

「そうか」

品川も白々しい気安め文句は口にしなかった。

玄関をおりて下駄を穿くと、愛之助はひょいと振り向いた。上りがまちの障子に凭れて品川が見送っている。

「一寸君に聞いて置くが」愛之助が無表情な顔で、途方もないことを口にした。「君は本当に品川四郎なんだろうね」

相手はギョッとして思わずうしろを振返った。そして、妙にうつろな笑い方をした。