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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Read 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,496 characters · 368 screens
……お死になされた様子もないが、どこに何をしておられますやら。……」
――物見に行っていた関口勘之丞が、この時小屋へ駈け込んで来た。
「彼らいよいよ参りましたぞ! 紀州藩士ら大挙して、物々しく寄せて参りましたぞ!」
「よーし!」
と嘉門は立ち上がった。
紀州藩士たちは進んで来ていた。
敵の陣営――急出来の小屋あたりに、焚きつらねてあった篝火の光が、木間から隠見して見えた。
「霜降氏」
と加藤源兵衛が云った。
「貴殿一隊をお率いになり、彼らの背後へお廻りくだされ」
「心得てござる」
と霜降小平は云って、五十人ほどの一隊を率い、林を左手へ迂回して行った。
(どっちみち相手は浪人と百姓、揉みつぶすに手間暇はいらない)
だれもがみんなこう思っていた。
彼らは浜松での出来事を、紀州へ帰って重役衆へ告げ、自分たちの手落ちの罪を待った。
重役は頼宣卿へ言上した。
「萩丸の身の上不便ではあるが、……止むを得ぬの」
と頼宣卿は云われた。
「囚人の五十嵐右内とやらを、奪い取られたは一大不覚」
こう頼宣卿は言葉をつがれた。
「右内と右内を奪った者とを、さがし出して是非に討ちとれ。……萩丸の身は不便ではあるが……止むを得ぬの」